音楽好きとしては、ジャニーズ事務所を巡る、松尾潔と山下達郎の問題については結構注目しています。
松尾潔が、どうして一時期は自身もプロデュースに携わったジャニーズの件を執拗に言及し続けれるかといえば、おそらくはかつてアメリカのソウルミュージックを専門とした音楽ライターだった経歴も関係し、「ME TOO」等、アメリカの芸能界を揺るがせた、立場を利用した性加害問題についてかなり敏感だからではないかと思うのです。ソウルミュージックは黒人を中心とした音楽ジャンルで、その歴史を辿れば、それほど時代を遡らなくてもそこかしこに人種差別の苦しみや、それとの戦い―つまり弱者の歴史が垣間見える。
そして日本でも同じことが起こったが、どうもアメリカ社会ほど真相究明への追及に勢いがつかない。そもそも、火を点けたのが日本のマスコミではなく英国のBBC。松尾が苛立っているのはよくわかる。挙句自身が、権力や権威—力を持つ者への忖度という、それこそ人種差別や「ME TOO」問題の根底にあるものによって所属している組織を叩き出されたのだから、穏やかでいられるわけがない。元々、この松尾潔という人、見た目やラジオ番組での語り口ほど「大人」ではない。渡部直己がセクハラで早稲田大学を追われたときも、自分の過去の体験を引き出して渡部に厳しい追い打ちをかけていた。この渡部直己という男、昔、新聞(朝日か読売かどっちか)で彼の文章を読んだとき、どういう文章か忘れましたがひどく嫌な感じを受けた記憶がある。その後「噂の真相」のコラムで筒井康隆が渡部をボロカスに人格否定していたのを目にしましたが。それはともかく、松尾も山下達郎に恨み言のひとつやふたつぶつけてやりたいはず。
一方の山下達郎、来週の自身のラジオ番組で何かしら話すつもりのようですが、このジャニーズ問題に対して、とりわけジャニーズ事務所の肩を持っているわけではないが、松尾ほど真剣に考えていなかったのかもしれません。山下達郎は良くも悪くも音楽”職人”で、松尾ほどアメリカ、そして日本の芸能界を取り巻く環境に対する問題意識を持っていなければ、情報も摂取していない…のでは?良く解釈すれば、昨今の芸能人に多々見られる、詳しくもないのに何にでもしゃしゃり出て高説をぶつ真似事を嫌い、悪く解釈すれば、自分とその視界以外には、何が起こっても関心が薄い。ラジオで舌鋒鋭いときもありますが、あくまで音楽に関して。
山下達郎と松尾潔、両名がプロデュースしたのは鈴木雅之。山下は1988年のアルバム「Radio Days」、松尾は2007年のアルバム「Chanpagne Royale」でそれぞれプロデュース。「Radio Days」は今でもよく聴く名盤であるのに対し、「Chanpagne Royale」は、自分の中では、これまでの鈴木雅之のアルバムで最低の駄作だった。「マーチン史上、最ワル!」などと帯で銘打っていますが、私からすれば「確かにアルバムの出来はマーチン史上最”悪”だな」と。でも、何回か聴き直すと、まあいい曲かな、という曲も何曲かはあった。でも「Radio Days」には到底及ばない。松尾潔より松尾清憲の方がいい(「恋人」はそんなに好きな曲じゃないけど)。
でも、今回の件については私は松尾潔を応援します。山下達郎のように黙っていれば、これからもジャニーズの有望株のプロデュースにありつけ、経歴に勲章を増やせたかもしれない。私の好きな作家・陳舜臣の「中国任侠伝」(1975年・文春文庫)に、
—侠者とは他人のために、自分の身をかえりみない者である。
—世界が動いてでもくれなければ、息がつまりそうで、どうにもたまらなくなると、人びとの心は熱っぽく侠者を慕うのである。
と記されています。”他者”とは日本の芸能界であり、松尾潔はここでは侠者です。
日曜日のラジオ番組での山下達郎の言い分次第では、持っているアルバム全て叩き割る!……のはさすがにアレなので、「郡上八幡葵の城」の店先に並べ「どうぞご自由にお持ちください」の札をつけておく。700枚くらいある私のCDライブラリの中に、山下達郎のアルバムはいらない。でも店主からすれば、50円くらいの値はつけてよと言うかもしれない。
ネットでは、自身が属している組織に不利な言動をすれば、追い出されるのは仕方ないと松尾を批判する人もいますが、一理あるようにみえて……この考えが日本全体のあらゆる社会でまかり通り、結果日本という国そのものを今の「詰んでしまった」状態にしたのでは?と思うのです。
余談ながら、前に松尾潔のラジオ番組を聴いていたとき、あのマイケル・ジャクソンのアルバム「Thriller」の中で、彼が一番好きなナンバーを言ったときは、飲んでいたコーヒーが気管支に入って咽た。「Baby Be Mine」。私が人にこの曲が一番好きと言うと、「どうして?」という感じで必ず胡乱な目で見られる、名曲揃いのアルバムの中で最もマイナーなナンバー。
さて本題の競馬予想。笠松競馬の「サマーカップ」を。1400メートル。第10R。15:45発走。
北陸・近畿・東海交流のSPⅡで、地元笠松勢が手薄なのをいいことに、1着賞金400万円を狙って、兵庫から4頭やってきた。おまえらハイエナかよ!と毒づきたくなりますが、予想する立場からすれば、悲しいかな、そのハイエナどもを中心にするしかない。笠松勢、愛知勢は厳しい。
一矢報いることができそうなのは、「飛山濃水杯」で馬渕が馬上踊りをしながらも3着に食い込んだ地元ストームドッグ。その後1800メートルのオープン戦を逃げ切った。ただ、今回は兵庫勢にパールプレミアという同型がいる。最内だけに包まれるのを嫌ってスタートから飛ばすはず。パールプレミアとストームドッグの間の枠にいる愛知ラクレットも、活路を見出すために序盤から押してくる可能性は充分。ストームドッグは折り合いで難しいところがあるので、競り合ってムキになってしまうところもあるかもしれない。逃げるには悪くない枠ですが、「飛山濃水杯」では出脚でもたつき、ちょっとズブそうな面も見せた。
◎2枠2番 ピナサクセス(兵庫・下原)
〇3枠3番 イナズマテーラー(兵庫・田中)
▲1枠1番 パールプレミア(兵庫・笹田)
△6枠6番 ストームドッグ(馬渕)
△7枠8番 バーニングペスカ(兵庫・鴨宮)
前が速くなりそうなので差し馬の台頭あるか?とも思ったのですが、どうも差し馬勢が頼りない。実績面では見劣りしない愛知ロッキーブレイヴも、夏は苦手なのか、好調子とは言い難い。自在性がありそうなピナサクセスを本命に。イナズマテーラーはここ3戦、1230メートル戦が続き、170メートルの延長は些事であるようなないような。逆にバーニングペスカは距離短縮になり、1400メートル戦の流れに上手く乗れるか?パールプレミアは最内枠だけに、鞍上笹田のポジショニングが鍵に。
買い目は三連単2、3→2、3→1、6、8で6点。好位からの2、3と、おそらく先行争いするであろう1、6、8のうちどれか1頭が3着に残ると踏んで。2、3は内枠だけに、3コーナーまでにうまく外に出せるかが鍵。