先日、元騎手の方と話をする機会があったのですが、今まで読んだ本やインターネットでは知ることもなかった様々なことを聞く貴重な時間となりました。
その中で実に印象的だったのが、私はリアルタイムで見ることはなかったのですが、オールド東海公営ファンなら絶対に知っている、安藤勝己でさえ足元にも及ばない名古屋の名手・坂本敏美。アンカツが足元にも及ばないというのは、当の本人が笠松競馬場のトークショーで明言していました。司会者が、坂本騎手を目標にしていたかと訊ねたのに対し、次元が違うからあの人を目指しても意味がない。敢えて意識せず、自分のスタイルを貫いて騎乗していたと。その元騎手の方曰く、アンカツは常に考えて騎乗していた。坂本は何も考えず騎乗していた。毎回毎回どう見ても駄騎乗なのに、毎回毎回それで当たり前のように勝ってしまうのが坂本だと。天才というのは神が与えた才能で、理屈で説明できないものは明らかに存在するのだと、その元騎手の方の話を聞いてつくづく思いました。坂本騎手はキャラクターも天真爛漫で、坂本騎手の色々なエピソードを聞きながら、これも現役時代を見たことがないもうひとりの天才騎手を思い浮かべました。福永洋一。洋一氏も天真爛漫な人柄だったらしく、悲劇的な形で現役を退いたのもまた同じ。
その福永洋一氏の息子で今は調教師の福永祐一がユーチューブの番組に出演して、そこで話した内容が色々物議を醸しているそうで。私はユーチューブは一部の歴史関係と「作業用」BGM以外は一切興味がないので、その番組も見ていないし、今後見ようとも思わないので、ネットの記事を読んだだけなのですが、着狙いとかシャケトラ云々は別にどうとも思わなかった。地方の交流重賞なんて、どう転んでも勝ち目のない馬は幾らでもいる。新聞のコメント欄でも調教師が「地方馬最先着を目指して」…て、中央枠は4頭(レースによっては5頭)だから、掲示板の隅っこじゃん!と。高知の馬なんて、中央とのグレード交流重賞や全国区の重賞に「お邪魔します」みたいな感じで出走してきて、ちゃっかり4着5着に入着して少なからぬ賞金を持って帰る。逞しいとはこのこと。まぁ、私は三連複中心なので、無理に勝とうとせず、堅実に着狙いをしてくれた方が有難くはある。
ただ、これは言ってはダメだというのが、
—僕らは馬券を買っているファンのためにやっているわけではない。当然意識してはいるけど、4着がダメやって考えではやっていない。
本音は皆そうなんだろうけど、それを言ってしまうと売り言葉に買い言葉。返ってくる言葉が
「こっちも馬券当てて儲けたいだけで、騎手を応援しているために馬券買ってるわけじゃない」
極論に辿り着けば
「おまえらの替わりはいくらでもいる。馬が脚折って死んでも、騎手が落馬して死んでも、競馬は何事もなかったように普通に開催して馬券が買えるからどうでもいい」
になってしまう。パチンコ台を入れ替えるのと一緒。
かつて小島太氏が、「俺たちは博打のコマだ」と言っていたのを田原成貴氏の本で読み、印象深く残っています。深読みすれば、博打の賽、コマなんか別に中にヘンな鉛や磁石が入っていなければ―八百長さえしなければ―、何でもいいわけで。
先述の元騎手の方に聞いた話で、一番嫌だった野次が「馬から落ちて死ね」で、意外だったのは、騎手というのは、野次はそういうよっぽど酷いものでなければ軽く受け流す程度かと思いきや、結構具体的に色々な野次を記憶している。今は「落ちて死ね」なんて野次は滅多に飛んでこないでしょうが、その元騎手の方や小島太氏が現役で手綱を握っていた頃は、このレベルは普通にあったらしい。というのも、当事の客は、酒が入っている人が多かったからで、暴言吐く奴の大概は酔客。そういう心ない野次を散々パドックで浴びていたから、小島太氏も「俺たちは博打のコマ」だと、開き直っていたのかもしれません。
今はそういう時代ではなく、多くの客が騎手に対してリスペクトを持っている。推しの騎手もいる。私も昔はそういう騎手がいて、たとえヘマして負けても、馬券がパーになったことより、次走その騎手が降ろされてしまうんじゃないかと、そっちが心配だった。福永祐一の発言は、そういったファンを突き放してしまうようなもの。福永の「馬券を買っているファン」は、馬券がハズれれば「落馬しろ」はないまでも、「次は騎手替えろ」とか「コイツが乗っている限り馬は一生勝てない」とか某大手競馬サイトの掲示板に書き連ねている輩を想定しているのかもしれませんが、ファンは福永が思っているほど馬券に拘っているわけでもなく、「4着がダメやって考えではやっていない」ような馬であれば、ファンもわかっていて4着、5着で上々。次に繋がると納得することも少なくない。だから
—馬券を買っているファンがすべてではなく、その馬に携わる関係者たちのことも考えれば、勝つこと、馬券圏内に来ることだけが絶対ではない。
という言い方があった。
福永の発言が本音の一端なら、「馬や騎手が死んでも競馬はなくならないからどうでもいい」も本音の一端。ただ、皆がその本音の一端を押し殺し、建前でやっている。私は建前は大切なものだと思っています。建前があるから人間は人間でいられるし、大事に守られた建前はやがて真実へと昇華していく。建前を取り去れば醜い動物に成り下がり、やがて醜い動物の醜い争いと化す。騎手がファンを突き放せば、真っ当なファンが去り、競馬場のパドックはまた昔のように「この台出ねえぞ」とパチンコ台を叩くように「馬から落ちて死ね」と罵声を浴びせるギャンブル中毒ばかりになってしまう。
最近、「嫌いな芸能人」とか「あいつは失礼な態度をとった」とか、建前を取り払い、本音を曝け出す発言をトーク相手からいかに引き出すか?といった番組、企画が流行っているようで。敢えて有馬記念のシャケトラとか、具体的なレースや馬名を出した件といい、福永祐一が出演したユーチューブ番組もそんな節があったのかも。武豊なら言葉を選べたのでしょうが…。
府中牝馬ステークスの予想を。
阪神開催のマーメイドSがなくなり、昨年秋の府中牝馬SがマーメイドSと同時期に移された。問題は、時期を重視して前身を阪神芝2000メートルのマーメイドSと考えるか、コースを重視して秋の府中牝馬Sと考えるか。前者であれば相当荒れる傾向のレース。
東京も終わりの馬場とか雨がどうとか考えるとそれこそ泥沼なので、なしで考えます。
◎3枠6番 ヴァルキリーバース(ルメール/1番人気 2.9倍)
〇4枠8番 ニシノティアモ(津村/2番人気 6.3倍)
▲8枠15番 ルージュソリテーヌ(西塚/6番人気 12.8倍)
△3枠5番 エストゥペンダ(荻野極/4番人気 7.9倍)
△7枠14番 パラディレーヌ(原/8番人気 18.5倍)
×5枠10番 ホールネス(三浦/11番人気 26.6倍)
本命はフローラS2着から1年近く休養し、復帰戦のリステッドを勝利したヴァルキリーバース。その後もしっかり乗り込まれています。復帰戦からちょっと間を空けたことで、前走の反動も心配せずに済むのでは。ルメールは来週から暫く勝手に夏休み。優雅なものですな、と言いたいけれど、リーディングがひとり抜けるということは、下の騎手たちにとってはチャンス。重賞勝ちで締め括って気分よく夏休みに入って欲しい。
ニシノティアモはここ2戦微妙ですが、前走はGⅠだし、前々走も5着とはいえ勝ち馬から0.2秒差。東京は3.1.0.4と比較的相性の良い舞台。欲を言えばハンデがもう0.5キロ軽ければ、といったところ。
ルージュソリテーヌは、昇級初戦の重賞だった前走3着でしたが、1.2着馬がそのままヴィクトリアマイルで1.2着。勝ったエンブロイダリーから0.2秒差。
エストゥペンダは昨年の牝馬クラシック、GⅠには出られませんでしたがトライアルのGⅡ、GⅢで3~5着。一頓挫した後のスピカS(3勝)こそ5着でしたが、持ち直した前走で勝利。今回昇級初戦ですが、3歳時の活躍から、牝馬重賞でも遜色ないはず。クイーンS3着、フローラS4着と東京も堅実に走る。54キロのハンデが魅力。
パラディレーヌは昨年オークス4着、秋華賞3着、エリザベス女王杯2着。ここ2戦が案外ですが、それほど酷い負け方をしているわけでもなく、実績を見れば1番人気でもおかしくないし、勝っても驚かない。調子が戻っていれば。
ホールネスは一昨年3着。1年以上の休養明けの3戦目。牝馬の中ではとりわけ大きい方なので、さすがに1年以上の休養明けでいきなりとはいかないけれど、前走は8着とはいえ牡牝混合の新潟大賞典で勝ち馬から0.5秒差だから決して悪くない。そろそろ一発あっても。
買い目は6を軸に三連複5、8、10、14、15に流して10点。